病気のせいにして欲しくない事件
読んで考えるほどに嫌な気分にさせられている記事を一つ。
だらだらと考えながらそのまま書いたので、かなり長い文章になってしまいました。
障害者関係のお話が苦手な方は、不快に感じるかもしれません。

以前、コメント欄に書いたことがあるので覚えているかもしれませんが、事件の経過はこんなところです。

11月2日、カナリア諸島のテネリーフでバーミンガムに住む老夫婦が睡眠薬を飲み海へ、心中を図ったが漁船に救助され妻は助かり夫は死亡。
翌日、地元の新聞社へ『遺書』が送られ、そこには入水自殺を図ったいきさつ~アスペルガー症候群の娘の消費癖で借金が膨らみ返せなくなった。~と書いてあったという。
夫の遺体もお金がない為に、イギリスへ連れて帰れない状態である。


よく読むと、地元の新聞社が「リバプール・エコー」。バーミンガムに移ったのはつい最近だそうでそれまで住んでいたのは、うちのもろ近所。
その後の記事には、亡くなった夫は元郵便局の副局長だったが、娘の消費癖を満たすために約1千万円を横領、今年1月に15ヶ月の実刑判決を受けたが、犯行はあくまでも『病気の』娘の消費癖を満たすためだったとして、執行猶予付きに軽減された。

なんかね、気に入らないのは、郵便局から横領したのも心中を図ったのもあくまでも夫婦の決断なのに、あたかも「アスペルガー症候群」が引き起こした悲劇のように報道しているところ。

ちょっと補足すると、アスペルガー症候群は自閉症の一つというか、スペクトラムの一部で、難読症や大動運動障害といった他の学習障害とオーバーラップする部分が多いのが特徴(とイギリスでは言われていますね)。
アスペルガー症候群の人って、鬱になりやすいし(狂言)自殺も何度となく図る人もいるようです。
買い物も「好き」というよりもそこはやっぱり「病的」に買うことでハイな気分になる人も多いのも事実。
事件の主である老夫婦の娘リサも買いもの好きを通り越して、買えないと鬱になっていたそうだ。鬱状態で家にいられてかなわないという理由でいろいろと買い与えている間に借金が膨らみ仕事先のお金に手を出したというんだけど、そこの一線を引くのがやっぱり親だと思うのね。
麻薬中毒の子供に薬が切れると荒れるから、と麻薬を買ってきてあげる親とレベルは同じ。そんな小手先のことで子供を喜ばせても何も解決しないのが分からないとは言えないはず。
新聞社に「病院もソーシャルサービスも誰も助けてくれない」と書いたらしいけれど、それも違う。
夫婦が住んでいた地区の自閉症協会で私自身、情報とアドバイスをするボランティアの登録をしているのだから。協会は人脈を持っているからあっという間に専門家へと話が進む場合もある。
それだけではない、ここには全国の普通の公立高校で唯一のアスペルガー・ユニットがあるほどの先進地区なのだから、ここで助けがなければイギリスどこへ行ってもないということ。

はっきり言って、医者に言えない、とか近所に恥ずかしいといった変なプライドを持っている人ほど自分の持つ問題を外に出さないで置いて、気がついたらもう手の施しようがない状態になってしまうのでは。

イギリスに住んだことのある人は分かるけど、イギリスでは『言わないと何もしてもらえない』国です。
黙っていちゃいけません。
役所のサービスなんてその端的な例で、どんなサービスがあるのか聞かない限り教えてくれないから、障害者の手当てを数年間ももらいそこねたなんてよく聞きます。

事件の夫婦の娘が入退院を繰り返している病院に、同様にアスペルガー症候群で入院している娘を持つ老夫婦を知っているし、(これまた彼女は買い物好きで、鬱っぽい)他にもアスペルガーの人や親をたくさん知っているつもりなだけに、この記事を読むたびに、これは違うだろう、病気のせいにしないでよって思ってしまう。

老夫婦は一緒に心中しようと誘ったら、娘は嫌だといったという。
それはそうだ。リサに、どうして親が借金したり横領したりするのかが分かる訳ないもの。
借金が返せなくて、もうお前に物を買ってあげられないから一緒に死のうと言ったって、おそらく覚えているのは、『物を買ってあげらえない』って所しかきっと覚えていないのでは。
だって、因果関係が解らないんだもの。
他人がどう思っているかなんて想い量ることは出来ないんだもの。顔が読めないんだもの、嘘がつけないんだもの、それがアスペルガーなんだもの。

夏に働いた障害児のサマーキャンプにもアスペルガーの子がたくさん来ていました。所長曰く、いつか社会にひとり立ちできるように社会性を教えるのが私たちの役目だって。
それは、障害の有無とは無関係です。
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by lisalisa9 | 2004-12-07 07:50 | 英国ニュース
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